私の祖父は、墓マニアであった。
飲んだくれの親の反面教師のお陰で
小学校しか行けなかったものの、のし上がったらしい。
なぜだか知らないが、晩年はひたすらお墓に時間とお金をつぎ込んでいた。
で、祖父が亡くなった時に、
「床下を掘ってみろ、お金が入ったカメがあるぞ」と親戚に母は言われたらしいが、
家族は知ってたから笑ってた。お墓になっちゃったよん、全部。
そして残った。広いお墓と墓石たくさん。
それもケヤキの大木の下。杉の木のそば。
春の墓掃除。
分厚く積もった枯葉にため息。
毎年二人でやっても半日仕事になってしまう。
いつもは杉っぱは焚きつけに、
ケヤキの葉は肥料にと
十数袋もちかえるのだけれど、
今年は濡れた枯葉のほかはおおかた燃やすことにした。
古い墓石は苔むすに任せて、
祖父の建てた九基の墓石は、毎回水拭きする。
雑巾が緑色になる。
ごしごし磨いていたら発見した。
私の祖父のそのまた祖父は、
家を息子に譲って、牧師になって夫婦で国後島に渡ったという。
どんな暮らしであったのだろうか。寒かったろうなあ。
墓石のてっぺんを磨いていたら、誰かの頭をなでているような気がした。
墓掃除も悪くない。ね。
それにしても田舎の「家」を守るって
昔のように大家族ならいいけれど
一人二人になると、これまた限界家族って感じだよなあ・・・。